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キャスターという仕事 (岩波新書)
国谷 裕子 (著)
クロ現」と共に歩んだ40代から支持を集め8万部。国谷裕子さん初の著書
1993年4月から2016年3月までの23年間、硬派な情報番組として多くの視聴者に愛されてきたNHKの〈クローズアップ現代〉。その番組の顔として活躍してきた著者が、キャリアの一区切りという意識で書き上げた新書が、順調に売れ行きを伸ばしている。番組に抜擢される前の挫折、放送開始後の悪戦苦闘、阪神・淡路大震災や9・11テロといった大事件と向き合った記憶……自らの波乱万丈のキャリアを、番組の制作事情や時代背景と重ね合わせつつ振り返る筆致は冷静だが、ぐいぐいと読者を引き込んで行く。
「本書は国谷さんの初めての著書なのですが、まるでそうは思えない書きぶりでした。お書きになる文章に思いというか、熱がすごく宿っていたんです。ですから編集する上では、文章に手を入れすぎず、国谷さんらしさを活かすことを心がけました。目次だてもほぼ国谷さんからご提案いただいたものそのままです」(担当編集者の永沼浩一さん)
新書の読者は一般的に50代の男性が中心だという。しかし本書の読者層は違う。
「読者の比率は6対4で女性の方が多いです。年齢層は幅広いですが、中心となっているのは40代。〈クロ現〉の放送が始まったころちょうど社会人になった世代が手に取っている感触があります。そうした方々には、国谷さんと一緒に歩んできたという意識があるのかもしれませんね」(永沼さん)
評者:前田 久
(週刊文春 2017.06.15号掲載)
今という時代を映す鏡でありたい──。従来のニュース番組とは一線を画し、日本のジャーナリズムに新しい風を吹き込んだ〈クローズアップ現代〉。番組スタッフたちの熱き思いとともに、真摯に、そして果敢に、自分の言葉で世に問いかけ続けてきたキャスターが、23年にわたる挑戦の日々を語る。
読者のみなさんへ 国谷裕子
番組を離れて10か月が経ち,〈クローズアップ現代〉に自分なりの区切りをつけたいと思いました.私には,次に向かって進むために,番組とともに過ごしてきた時間を整理することが必要だったのです.番組との出会いと別れ.キャスターの仕事とは何かと悩んだ日々.記憶に残るインタビューの数々.そしてテレビの報道番組が抱える難しさと危うさ.偶然のようにしてキャスターになり,大きな挫折も経験し,そのことへのリベンジとしてキャスターをやめられなくなった私.番組を制作する人々の熱い思いに突き動かされながら,様々な問いを出し続けてきました.この本は,言葉の力を信じて,キャスターという仕事とは何かを模索してきた旅の記録です.